新谷・北川合同事務所

「名義変更」じゃないのです。

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「名義変更」じゃないのです。

法律や登記の世界では、一般の方が使う言葉と、専門家が使う正式名称が異なることがよくあります。

 

例えば、「権利証」。

皆さん、「権利証」とおっしゃいますが、正式な名称は「登記済証」。近年法律改正後に作られた物は「登記識別情報通知」です。しかし、それではお客様に通じないので、私も通常「権利証はお持ちですか?」などとお話ししています。

 

もう一つ一般の方がよくお使いになる言葉で、土地建物の「名義変更」や「名義書換」があります。

これも正式名称は違っていて、所有権移転登記です。「ややこしいなぁ。これも『名義変更』とか『名義書換』でいいやん。」と皆さん思われるでしょう。しかし、こちらはそう簡単ではないのです。

 

例えば、Aさんから息子のBさんに自宅の「名義変更」をしたいというご依頼があったとします。この場合、私はまず次のようにお聞きします。「それは贈与ですか?それとも売買ですか?」そうすると何割かの方は、「きょとん。」とした顔をされ、黙ってしまわれます。

この時、Aさんの頭の中はたぶんこうなっています。「この先生何を言っているの?とにかく、息子に『名義変更』してくれたらそれでいいんだけど。」

 

これはAさんが、土地建物の「名義」をただの「名札」と思っていることからくる間違いです。お手元に登記簿謄本があれば、是非一度見てください。あなたのお名前の前に「名義」ではなく、「所有者」と書いてあるでしょう。土地建物の「名義」というのは、本当は「所有者」のことなのです。

 

「所有者」が変わるには、必ず「原因」があります。例えば、AさんからBさんに、ご自宅を「売る(売買。」のか、それとも「あげる(贈与)。」のかです。

 

今回の場合、おそらくBさんに「生前贈与」をしたいのだと思います。そうであれば、「名義変更」をするには、「自宅を息子に贈与します。」という内容の「贈与証書」を作成しなくてはなりません。もし、Bさんに売るのであれば、「売買契約書」を作成します。

つまり、ただ単に名義を変えるのではなく、「どんな原因で名義が変更したのか。」という書類を作成しないといけないのです。

 

ここまで説明すると、早とちりなAさんは「とにかく息子に名義変更できたらええねん。贈与でも売買でも先生の好きな方にしといて。」とおっしゃいます。いえいえ、そんな恐ろしいことはできまぜん。

ご説明したように、名義というのはただの名札ではないのです。司法書士として、所有者が変わる場合、「どのような原因で変更するのか。」きちんと確認する義務があります。

 

また、ご本人にとって恐ろしいのが税金です。土地建物の名義が変わった場合、必ず税務署にその通知がいきます。それによって、多額の税金がかかることがあるのです。

 

「贈与」ならば、「贈与税」がかかります。これはかなり高額で、いろいろな控除がありますが、1000万円を超えた場合、50パーセントもの税金がかかってきます。このようなことにならないよう、今回のAさんならば、「相続時精算課税制度」を使うなど、あらかじめ税金について検討しないといけません。税金面を考えると、名義変更をしない方がよいということも考えられます。

 

「売買」ならば、BさんからAさんに「売買代金」を支払った証拠をきちんと残しておかないといけません。そうでないと、実際は「贈与」であると税務署に認定され、「贈与税」を支払うことになってしまいます。また、この「売買代金」も市場価格より不当に安い金額だった場合、その差額を「贈与」と認定され、その分の「贈与税」を課税されるケースもあります。よって、「売買価格」は慎重に決めないといけません。

 

このように、「名義変更」はただ単に「名札の変更」ではないのです。

「名義変更」をされる場合は、きちんと専門家や公的機関に相談され、手続きされることをオススメします。簡単に登記の書類だけ作って申請し、後で多額の税金がかかってきたら・・・・。取り返しのつかないことになります。

 

そもそも「名義変更」という言葉が勘違いの元なんです。でも、皆さん今更「所有権移転登記」覚えてくれないだろうなぁ。